AEROSMITH - 2002 FIFA OFFICIAL CONCERT
●2002年6月27日 - Tokyo, Japan
「6月にまた会おう」。そんなメッセージを残して、スティーヴ ン・タイラーとジョー・ペリーが日本を去ったのは、ちょうど半年前のことだった。エアロスミスがニューアルバム「JUST PUSH PLAY」を引っ下げて、それに伴なう7度目の来日を果たしてくれたのは2002年1月末から2月上旬にかけてのことであり、その最終公演となった東京ドーム2日目のライブ終盤において飛び出したのが、まさにこの気になるメッセージであった。「本当に6月にまた会えるの?」「そんなすぐに再来日公演をするわけないし、いったい何があるのだろう」と様々な期待と噂がエアロファ ンの間で駆け巡った。その当初から「2002年6月の日本と言えば・・・」「思い浮かぶイベントと言えばアレしかないけど・・・」という声はあったが・・・。そう、それは、まさしく “日韓共催ワールドカップ”であった。「エアロとワールドカップ?なんかイメージ合わないなぁ」そんな意見が大半を占めていたが、その後、この噂はエアロファンの喜びへと昇華したのだ。 まずは、B’zファンの間で「B’zとエアロスミスがワールド カップのコンサートで競演するらしい」という情報が交わされ、それは様々なルートを経由して、エアロのファンサイトなどにも流れ、いつしか公式発表の時を迎えることになる。「ついこの前、エアロのライブを思う存分楽しんだばかりなのに、また、ライブを見ることができるなんて、なんだか信じられない」。コアなエアロファンであればあるほど、正直なところ、嬉しさと同時に戸惑いを感じていたのではないだろうか。それもそのはず、エアロ来日公演で完全燃焼しきったばかりのアタマとカラダには「あまりにインターバルが短い」のであり、「(1年に2度もエアロ来日なんて)もったいないような気持ち」になってしまうのである。 しかし、そんな考えはほんの一瞬のことであり、いざチケットを入手すると、「1日でも早く、あのエアロのライブを再び見たい」という欲求がフツフツと沸いてきた。そうなると、エアロファンの次なる関心事はB’zとの競演についてとなる。日本における B’z人気の凄まじさはエアロファンも十分に認知しているので、中には、「(当日は)B’zファンが席のほとんどを埋め尽くしてしまうのではないか」「B’zのライブが終わったら(エアロのライブを見ないで)B’zファンは帰ってしまうのではない か」などという(思い込みだけでの)意見も出ていた。そんな意見を聞くと、日本で初めて行なわれるWカップにおいて、むやみやたらに「フーリガン」に過剰反応している一部の日本人の姿と重なって思えた。
2002 FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN
OFFICIAL CONCERT INTERNATIONAL DAY 開 催 決 定 !
【出演】 エアロスミス/B’z ほか
6/27(木) 東京スタジアム open:15:00 start 17:00
料金:¥15,750(税込/特製ポンチョ・プログラム付)
コンサート当日を迎えた。チケットに記入された「雨天決行」 「特製ポンチョ付き」のコメントで、参加するほとんどの人が覚悟をしていた天気は、予想通りの“雨”。会場となる東京スタジアム(JリーグのFC東京と東京ヴェルディのホーム)がある京王線「飛田給」駅に着いた時には、まさに「これから(雨が)本降りになりそうな気配」であった。前日の天気予報も「明日は終日雨。午後からは雨足も強くなり、夕方から夜にかけては雷がともなうこともあるでしょう。梅雨寒の一日になりますので・・・」というような「もう笑うしかない」予報。駅構内では 「本日は5万人コンサートが開催されます・・・大変な混雑が予想されますので、お帰りの切符は・・・」というアナウンスが何度も繰り返されていた。残念ながらWカップで使用されることはなかった東京スタジアムであるが、駅員たちにとっては、今日は、まさに「Wカップ・モード」であったのだろう。京王線特急も本日は「飛田給駅」へ臨時停車し、帰りも電車を増発する気合いの入れようだ。それにしても「本当に5万人もの人が集まるのであろうか」「雨の野外スタジアムが満員の人で埋め尽くされるのだろうか」。とにかく「飛田給駅」は人であふれかえっていた。東京スタジアムに続く路も、駅からスタジアムまでぎっしりと詰まっているようだったが、とくに混乱もなく、何千という傘が数珠つながりで連なっていた。あいにくの天気のため、コンサートには“つきもの”のアーチスト未公認のグッズ店や夜店はほとんどなく、雨音だけがポツポツと寂しい音を立てている。通常ならば10分程度の道のりを30分かけて、やっと東京スタジアムに到着した。「やはりデカイ!」。すでに開演時間が過ぎているので、スタジアム内から演奏中の音が聴こえて来る。正面入り口からゲ ートインしたが、目指すアリーナ入り口は、ぐるりとまわって、 かなり先のようであった。そうこうするうちに、やっとアリーナ入り口に到着。人の流れがどんどんとその中に吸い込まれている。 チケットを切ってもらい、流れのまま進んでいくと、チケット代に含まれているプログラムとポンチョ(色はホワイトで黄色い文字でFIFAマークや今日の日付がプリントされている)を渡された。この時点では、まだ小雨が降っていたので、さっそくポンチョを着てみる。まわりを見てみると、このポンチョの上に、さら にエアロTシャツやサッカー日本代表の青ジャージなんかを着込む人もいた。準備も整い、さぁ中へ・・・・ 東京スタジアム内に足を踏み入れて、まず驚いたのが「その光景」だった。アリーナもスタンドも“真っ白”だった。そう、東京スタジアムを埋め尽くした5万人が「あの白いポンチョ」をアタマからかぶって着ているその風景は「未だかつて見たことがない光景」に他ならなかった。たぶん、会場に入った瞬間に、誰もがそんな気持ちになったことだろう。B’z稲葉もライブの中で 「ステージから見ると、(アリーナとスタンドに)なんだか雪が積もっているみたいで、とってもキレイだ」と言っていた。東京スタジアムは見事に満員となっていた。
平日の夕方、それも悪天候の中、Wカップとは直接的には関係のないロックファンたちが巨大スタジアムを埋め尽くしたのである。アメリカで何度も野外ステージでのライブを見ているが、そのほとんどはアリーナ・クラスであり、スタジアム・クラスとなると数年前のストーンズまで遡ってしまうだろうか。今回は、カリフォルニアの空の下での野外ライブとは違い、日本の梅雨空の下でのライブであるが、やはり野外は気持ちいい。それに、この大観衆だ。ゾクゾクっとする熱いモノを感じてしまう。今夜のコンサートは、きっと歴史的なモノになるだろう。そんなエアロファン・B’zファンの想いが届いたかのように、この歴史的なコンサートに、水を注していた雨が、B’zのライブがスタートする頃には、ほとんど霧くらいの小雨となり、さらには、エアロが登場した時には、ピタッと (雨が)止んだのだから驚きであった・・・・。 18時30分過ぎに、まずはB’zのライブがスタートした。エアロを目当てにして来た人たちにも十分に楽しめる内容であったと思う。ベースには何と元MR.BIGのビリー・シーンというメンバー構成も驚きであった。ボーカルの稲葉はMCを交えながら15曲を熱唱し、B’zファンを十分に満足させたようだった。中でも、ラストを飾った「ultra soul」の盛り上がりは凄いもので、 最後はKISSの96年デトロイト・スタジアムでのライブを彷彿させるような花火が、ステージ屋根付近からドカンドカン打ち上がり、さらにはステージ前方にズラリと仕掛けられていたパイロが、いっせいに爆発して、もの凄い音を出した。その凄さたるや、(席がアリ ーナ前方ということはあったが)ビックリして腰をかがめて身構えてしまった程であった。それにしても、たぶん、会場の半分以上を占めているだろうと思われるB’zファンの元気の良さと盛り上がり方には感心するほどであった。ライブが始まる前にステージ横のスクリーンにB’zの映像が映るだけで、もう「キャッ キャ」という感じ。B’zのファンは圧倒的に女性。というよりも女の子たちであり、エアロやKISS、ましてやAC/DCのライブでは、絶対に見かけることはない層といえた。しかし、そんな女の子たちの盛り上がりにつられるかのように、エアロファン(20代30代の男女中心)の多くが、一緒になって盛り上がっていた。 裏話となるが、実はこのB’zのライブを見ずに、その時間に、スタジアム内の休憩場所で、エアロライブに備えて、エアロTシャツを着込むなどしていたエアロファンのかなりの人が、コンサート関係者に「エアロスミスのファンの方ですか?」と声をかけられ、今回も急きょ設けられたエアロカフェ(STEVENがファンとの距離をなくしたいと要望したことで、前回来日公演からアリーナ最前列のさらに前に設けられた“究極のボックスシート”) に招待されたらしい。あまりに急であったため、エアロカフェを十分埋め尽くすだけのファンを集められなかったための緊急処置であったらしいが、幸運な人もいるものである。但し、この素晴らしいB’zのライブを見逃したことを、多少なりとも後悔しているかもしれないが・・・・。 1時間ちょっとのB’zのライブが大興奮の中で終了した。次はついにエアロスミスである。ステージセットを組み直す間に、ステージ横の巨大スクリーンに、エアロスミスのメッセージ・ビデオが流れ始めた。この内容はメンバー全員がそろっている中で、 STEVENが「一夜限りのライブだけど、思いっきりロックンロールを楽しもう!」というようなものだった。思いがけない演出に、エアロファンは大喜びだ。その後、エアロのビデオクリップがしばらく流され、「そろそろ、かな・・・」という瞬間を迎えた・・・・。
すっかり雨も止み、皆がポンチョを脱ぎ終わった頃だった。ついにエアロ登場である。今回のエアロはアッという間に来日していた感じだったので(25日成田着)、この目でSTEVENを、そして、JOEを見るまでは信じられないような気持ちだ。ドラムのジョーイ・クレイマーがドラムセットに腰を下ろした。
01.Back In The Saddle
20時38分。期待していたオープニング曲は、いきなりの「Back In The Saddle」だった。「ザンザンザンザン、ザンザンザンザン・・・・」という「あのサウンド」が聴こえて来た。それに合わせるかのように、歓声と手拍子がどんどん、どんどん大きくなる。エアロファンの誰もがSTEVENの「シャウトの瞬間」をゾクゾクしながら待ち望んでいる・・・「I'm BaaaacccK !!!」・・・この瞬間、エアロヘッズは、一気に弾けた(気持ちイイ!)・・・前回エアロのライブを見てから5ヶ月が経っているのに、今でもカラダにしっかりとその余韻が残っているため、なんだかあの日から続いているような気持ちである。 真っ赤なロングベストを着込んだSTEVENの右腕には「夏娘」左腕には「必勝」の文字が明朝系の書体でペインティングされていた。JOEはブラックのロングコート姿であり、そこにはドラゴンが描かれている。いつものエアロが、今まさに目の前にいる。02.Love In An Elevator
「ハロー、トーキョー」。ここで今夜初めて、STEVENがオーデ ィエンスに声をかける。2曲目は、期待通りの「Love In An Elevator」だ。エアロファンたちは「待ってました〜」とばかりに手を振り上げて「オーゥ」「イエーィ」を繰り返す。B’zフ ァンたちも一緒になって、よく手があがっている。今夜のライブ もかなり盛り上がる期待が大きく膨らんだ。03.Just Push Play
間髪おかずに、続けて「Just Push Play」だ。前回の来日公演でもスゴイ盛り上がりだったのを思い出す。この曲も「Love In An Elevator」に負けず劣らず、STEVENに合わせて「Fuckin'A」 の大合唱だ。こういう皆で一緒になって声を出せる曲は本当に楽 しい。話によると、この日のライブは8月にNHKで放送される予定らしく、先ほどから、テレビカメラがステージのまわりで動き回っている。しかし、NHKで「Fuckin'A」は、ちょっとまずいだろうから、放送時には、果たしてどんな対応になるのだろうか(結局、そのまま放送されていた)。04.Jaded
ここまで一気に来てしまったが、ここでやっと一息という感じ。すると、STEVENが突然「オーレー、オレオレオレ、オーレー、 オーレー」とWカップでお馴染みのあのフレーズを歌い出した。皆、大ウケである。STEVENが「SINGING!」と叫んだのをキッカ ケにして、次は皆で「オーレー、オレオレオレ」の大コール、一瞬にして、東京スタジアム全体がWカップのようなノリとなり、 このコンサートがFIFA主催のコンサートなのだとあらためて感じさせられた。3度目のオレオレ・コールには、ドラムも入り、 そのドラム音は、そのまま「Jaded」のイントロとなっていった。 ニューアルバム「JUST PUSH PLAY」の中でも、最もキャッチーなこの曲は、すでにエアロファンの耳にはすっかり馴染んでおり、 「マイ、マイ、ベイビー、ブル〜♪」のところでは、まさに大合唱状態となった。05.Mama Kin
ここでSTEVENはエアロカフェのファンたちに声をかける。幸運なファンたちも扇子を振ったりして大喜びである。そして、ステ ージ中央に移動した後、イタズラっぽく左腕の「MAKIN」タトゥーを指して「DO IT !」と叫んだ。もちろん、「Mama Kin」のスタートだ。お馴染みのフレーズが聴こえてきて、もう最初から最後まで皆で歌いまくった。06.Pink
今度はブルース・ハープを取り出したSTEVEN。一夜限りのスペシャル・ライブの今夜。どんな曲が飛び出すかは誰もわからない。 「Big Ten Inch Record」だろうか?「One Way Street」だってあり得る。しかし、その答えは「Pink」だった。スクリーンには、 いつもの楽しい「Pink」のPVが流れる。ステージ全体もピンク色のライティングに変わり、この曲だけが持つ独特の雰囲気を生み出した。07.Girls Of Summer
「次は、オレたちの一番新しいヒット曲・・・」STEVEN自らの曲紹介を受けて、「爽やか」という表現がまさにピッタリのイントロが始まった。そう、今夜、エアロファンが一番期待していた かもしれない新曲「Girls Of Summer」である。この曲はエアロスミスの功績を称えるスペシャル特番「MTV Icon」で初披露されたばかりなので、いち早く日本のファンがライブで聴けることには、きっと世界中のエアロファンたちが羨ましがったことだろう。さすがに、この時ばかりは、皆、聴き入っている感じだった。08.Stop Messin' Round
今夜は、通常ライブと違うため、いつもよりは曲数が少なくなるので、どうかと思っていたが、JOEタイムはしっかりと確保されていた。STEVENの「ファッキン・ペリー」といういつものフリを受けて、JOEがセンターへ。「(日本に)戻って来れて、とても嬉しいよ」「ボストン・スタイルのブルース(を聴いてくれ)」と挨拶。「Stop Messin' Round」 が始まった。今夜のJOEは足の手術の影響もあるのか、いつもよりはパフォーマンスを抑えている感じであり、使用するギター数も少ない。そんな中で、珍しくフライングVを弾くJOEの姿は、JOEファンから注目をあびていた。09.Dream On
「Dream On」のイントロが流れてくると、アリーナでもスタンドでも「ライターの火」が灯った。野外というシチュエーションがますます誘発させたかのように、その数は、いつもより数倍多い。 アメリカなどでは、バラード系の曲の時には、普通に行なわれることであり、日本でもますます浸透してきているが、決定的な違いは、日本では消防法の関係から、「すべてご法度」であることだ。今夜もあちらこちらで会場係員が「ライターは止めて下さ い」とその行為を制していた。可笑しかったのが、係員が、ペンライトを振るファンにまで「止めて下さい」と言っていたことだ。 (上から言われたまま)とにかく何でもダメとしていたのならば、 何ともバカバカしく思えるシーンであった。せっかくのワールド・ワイドなイベントであるのに、その対応は、まさに「日本的」であるのは悲しいことだ。10.Draw The Line
曲間に、STEVENがいきなりBeatlesの「Wait」を歌い出した (この曲はアルバム「HELP!」でレコーディングされながらボツになって「RUBBER SOUL」に収録された佳作)。その歌詞は 「It's been a long time Now I'm coming back home I've been away now Oh how I've been alone Wait till I come back to your side」 おそらくSTEVENはこの曲を通して「(この一夜限りのライブが終わったら)アメリカへ帰らなくちゃならないけど、(日本のフ ァンの)みんなのところに戻ってくるまで、きっと待っててくれよ」と自分の気持ちを伝えたのだと思う。こういうところでのSTEVENの機転の速さ・センスの良さは「さすが」である。そして、いつものオープンAの「ジャ〜ン」というギターで「Draw The Line」が始まった。その瞬間、男性ファンからも「ヒェエ 〜」というような歓声とも悲鳴ともとれる野太い叫び声まで起こった。JOEのスライド・ギターも「ギュン、ギュン」と気持ちいい音をかき鳴らしていた。間奏では、あの東京ドーム初日公演で起こった「Draw The Line」から「Let The Music Do The Talking」への展開を再び期待してしまったが、やはりあれは特別のことだったのだろう。今回はその軌跡は起きなかった。でも、 この日のライブは、「Draw The Line」と「Back In The Saddle」を、同じ夜にいっぺんに聴く事ができたのだから大満足である。11.I Don't Want To Miss A Thing
12.Cryin'
まさにノリノリの「Draw The Line」から一変して、バラード系が続く。またまた、あちらこちらで「ライターの火」が花を咲かせ、会場係員とファンとのイタチゴッコが起きていた。13.Walk This Way
14.Uncle Salty〜Sweet Emotion
今夜、どんなセットリストが続くのかは誰もわからない。「果たして、次は何をプレイしてくれるのだろう」「いったい何曲やってくれるのだろう」・・・。すでに、「Girls Of Summer」はやってくれたので、後は、いったいどんな嬉しいハプニングが残っているのだろうかと期待が膨らむ。しかし、ライブ本編のラスト は、前回来日公演と同じ内容となった。トム・ハミルトンの爪弾 くベース音が、東京スタジアムに響き渡り、「JUST PUSH PLAY ツアー」ではお馴染みとなっていた「Uncle Salty〜Sweet Emotion」が展開された。15.Theme From Spiderman
ここまで14曲。本当に「あっ」という間であった。東京スタジアムのあちらこちらから「もっとエアロを聴きたい、見たい」と いうアンコールの拍手が起きている。すでに、コンサート終了予定時間の21:30はまわっている。エアロ単独のコンサートではないので、本当にアンコールをやってくれるのだろうかと一抹の不安を覚えたが、ステージ上に、再び、エアロのメンバーが姿を見せてくれた。JOEサイドに何やら見慣れない黒い箱のような機材が置かれている。「こ、こ、これは、もしかして“テルミ ン”?」(注1)。昔、レッド・ツェッペリンのライブでジミ ー・ペイジが使用していたのを知っているが、このテルミンの登場にはかなり驚いた。JOEはテルミンに手をかざして、「ギュー ン、ギューン」という独特の音を出し始めた。それは、まさにエアロが参加して話題となっているサントラ「Spiderman」に収録されている「Theme From Spiderman」であった。それにいち早く気づいたエアロファンから「スパイダーマ〜ン」と声がかかる。またまた、嬉しいハプニングで、エアロファンたちは大喜びだ。テルミンに続いて、ヘヴィなギターリフで「Theme From Spiderman」 が始まった。それにしても、ドラゴン刺繍が入った黒のロングコ ートを着て、JOEがテルミンを演奏している姿は、全盛期のジミ ー・ペイジにそっくりであり、不思議な感じさえ覚えた。16.What It Takes
予期せぬ「Theme From Spiderman」で、曲が終わっても、ざわめきが収まらない中、STEVENがアカペラで「What It Takes」を歌い出した。野外ということもあり、いつも以上に、この曲の魅力が増している気がする。きっとB’zファンたちも、エアロスミ スのもうひとつの魅力とSTEVENのボーカルの美しさを十二分に感じた瞬間であったことだろう。17.Livin' On The Edge
続いて、「ズン、チャッ、ズン、チャッ」というJOEYのドラムの音が会場に響き渡る。「Livin' On The Edge」だ。前回来日の東京ドーム2DAYSでは、セットリストから外れていた曲なので、 喜んでいる人が多い。すでにアンコールは3曲目に突入した。通常のエアロのライブであると、アンコールは3曲なので、今夜は 「Livin' On The Edge」で終わってしまうのだろうか・・・・。18.Train Kept A Rollin' (withB’z)
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誰もが、そんなことを思った瞬間だった。STEVENがマイクを通 して「Tak(タク)、Koshi(コシ)」とB’zの二人に呼びかけた。東京スタジアム全体に「うぁぁああ〜」という、この日一番の歓声が上がった。あまりに歓声が大きかったため、よく聞き取れなかったB’zファンが「何、なに、ナニ」と大慌てしている。 そんな状態の中で、ステージ脇から、今まさにB’zの二人が姿を現したのだから、大変だ。そんな興奮状態がまったく収まらない中、まず、STEVENが「ドモ、アリガトゴザイマス」と日本語で「ウドー、ソニー、そしてFIFA」に感謝の言葉を述べた。嬉 しいことに、コンサートはこれで終わりではなかった。何とここから「Train Kept A Rollin'」が始まった。もうエアロファンにはたまらない大サービスが、これでもかという感じで続いている。 アンコール4曲目に突入である。まさか前回来日の最終日公演で、 帰国便の都合からアンコールを1つ削ってしまったお詫びという ことではないだろうが、もう「言うことナシ」の展開だ。いつものJOE、BRADに加えて、さらに、B’z松本のギターも加わり、 左右のアンプから「ギュンギュン」とギター音が唸り出した。そう、これはまさしく「Train Kept A Rollin'」発車の合図である。 もうたまらない・・・。まずはB’z稲葉がボーカルをとった。 エアロのライブ中には、どちらかというと「この人たちがエアロスミスという人たちなのね・・・」という感じで(B’zライブ でパワーを使い果たして)ライブを見ていたB’zファンたちも 最後はエアロファンとまさに一体となって、ものスゴイ盛り上がりだ。続いて、STEVENがボーカルをとる。見ているこちらも最高だが、ステージ上の全員が本当に楽しそうだ。その楽しそうな表情がスクリーンを通して、しっかりと伝わってくる。途中の間奏のところでは、STEVENに促されるように、まずはB’z松本がリードを弾いた。その姿を、左斜め後ろからJOEが見守るかのように見ていた姿が印象深い。B’z松本に続いて、次はBRADがリードを弾き、さらにJOEが続いた。一通りリードを弾き終わって、誰もがこれで終わりと思っていたところで、「もういっちょう、やってみろ」と後押しされたカタチで、再び、B’z松本 がリードを弾き始め、この思いがけないギター・バトルが、もう1周始まった。スゴイ、スゴイ。後日、B’z自身がラジオ番組中で語った内容によると、このエアロとB’zのジョイントにあたっては、コンサート前日の打ち合わせ時に「Train Kept A Rollin'やるぞ」と、STEVENから伝えられて驚き、さらには、JOEからは「(オレたちはいつもやっている曲だから)音合わせは当日でいいよな」と言われて、(B’zの二人は)かなり焦ったらしい(結局、前日にも簡単な音合わせを行なった)。
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事前にある程度の音合わせをしたとは言うものの、このリードソロ合戦は、おそらくアドリブだったのだろうと思う。これ以外にも 「Train Kept A Rollin'」の途中で、STEVENとB’z稲葉が、 肩を組み、1本のマイクで一緒にボーカルしたシーンでも、1回目は稲葉のマイクで成功したが、2回目はSTEVENのマイクの順番だったのに、STEVENがすっかり忘れてしまったようで、マイ クなしで、頬っぺたをくっ付けただけの状態になってしまい、お互いに照れ笑いしていたシーンがあった。あれもアドリブが生んだ楽しいハプニングであったのだろう。ちなみに、この二人は、ライブ終了後も、そのまま廊下で肩を組んで一緒に歩いていたほど、意気投合したらしい。ステージセンターでは、B’z稲葉を 中央にして、向かって左にSTEVEN、右にJOEの3人が肩を組んで「Train Kept A Rollin'」を楽しそうに歌っている。そして、 エアロファンもB’zファンも、完全一体になって「ALL NITE LONG !」の大合唱だ。東京スタジアムの興奮は極限に達した・・・・。 「宴もいつかは終わる」。1ヶ月にもわたり、日本中を熱狂させたWカップが終わってしまったのと同様に、世界初の試みであったFIFA公式コンサートも最後の瞬間を迎えてしまった・・・・。 再び、STEVENが日本語で「ドモ、アリガトゴザイマシタ」と東京スタジアムを満員にした観客に感謝の言葉を述べた。続いて B’z稲葉が「おやすみー」と絶叫し、B’zファンたちが、あらん限りの声でそれに応えた。そして、この歴史的なコンサート を締めくくったのは、誰が教えたのかSTEVENの発した「バイちゃ!」の一言であった・・・・。 この日のエアロのセットリストは、新旧織り交ぜてエアロ・ヒッツがズラリと顔をそろえたものであり、7月3日にリリースされた究極の2枚組ベスト・アルバム「O Yeah、−Ultimate Aerosmith Hits」の、まさに“ライブ版”という感じであった。 今年2度目となるエアロ再来日も、きっと、このニューアルバムのプロモーションを兼ねていたからこそ実現できたのだろう。今回のB’zとの競演によって、B’zファンたちも、きっと「エアロスミスはカッコイイ・楽しい」と思ってくれたと思うし、そうなると、エアロのニューアルバムは、ますます売れることになるのではないだろうか。とにかくエアロはよく働いているという ことだ。FIFAから出演要請を受けたエアロスミス自らが、B’ zを指名したことから実現したこの競演。今夜の出来から考える と、STEVENが「全米ツアーのオープニングアクトにB’zを連れて行こうと思っている」という噂もまんざらウソじゃないと思えるくらいである(現実的には難しいだろうが)。B’z稲葉が MCで「こんなすごいコンサートは、やってるほうも、みているほうも、きっと、一生に一度のことだろう。お互いに悔いのないように、思いっきり楽しもう」といった言葉通りに、歴史に残る “一夜限りのライブ”であった・・・・。SET LIST
01.Back In The Saddle
02.Love In An Elevator
03.Just Push Play
04.Jaded
05.Mama Kin
06.Pink
07.Girls Of Summer
08.Stop Messin' Round
09.Dream On
10.Draw The Line
11.I Don't Want To Miss A Thing
12.Cryin'
13.Walk This Way
14.Uncle Salty--Sweet Emotion Encore
15.Theme From Spiderman
16.What It Takes
17.Livin' On The Edge
18.Train Kept A Rollin' (withB’z)(注1)
「テルミン」とは1920年、ロシアの物理学者にしてチェロの名 手だったテルミン氏によって発明された、世界最古の電子楽器で ある。最大の特徴は楽器に直接触れず、空間に置いた両手の動き によって演奏する点にある。楽器に備え付けられたアンテナの周 囲には微弱な電磁場が形成されており、手を近づけたり遠ざけた りする動作により電磁場を干渉、音高、音量の変化を導き出す。 音高を定めるにあたって、眼で見てわかる、触れてわかる基準が 存在せず、演奏者の耳だけが頼りとなるため、演奏法は難易度の 高いものとされている。
