英会話C表指導案 1

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│    観光英会話を意識した、英会話授業の工夫 │
│ │
│栃木の有名な食べ物を紹介しよう(栃木の有名な食べ物を外国の人にも知ってもらおう)│
│ What do you want to eat ? I want to eat 〜. │
│ TOSS北那須教育サークル あべ松龍矢abetatu@khaki.plala.or.jp(C表 12級 72点)│
│ 栃木県那須塩原市埼玉2-97 │
│ 総合的な学習の時間(英会話) 対象学年4年生 30時間前後 │
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1 テーマについて
観光英会話を意識した英会話授業をするためには、どの様な工夫をすればよいか。

2 テーマ設定の理由
TOSS箱根合宿で、観光庁観光地域振興部観光資源課長の水嶋 智氏から、「観光庁の設立と観光立国推進について」の講演があった。その中で、「ビジット・ジャパン・キャンペーンの取組み」の説明があった。次のような内容である。
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│ 2010年までに、訪日外国人旅行者数を1,000万人にする。また、2020年に │
│ は2,000万人の目標設定も含めた中長期課題を検討している。 │
│ これだけ多くの観光客を日本に迎え入れるためには、まずは日本の魅力を世界に知って│
│ もらう必要がある。 │
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この点に関して、首相官邸のキッズルームウェッブマガジンの中に次のような記述がある。
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│ 日本の魅力を世界に知ってもらうには、日本という国のイメージとなる「日本ブラ │
│ ンド」を広く、効果的に発信しなくてはなりません。そのためにはまず、日本の魅 │
│ 力日本のイメージについての諸外国の評価について徹底的に調査し、何を強調し、 │
│ どう発信するべきか、戦略を立てる必要があります。 │
│ 外国人観光客に、日本を魅力的だと感じてもらうには、ハード、ソフト両面からの │
│ 改善が必要です。たとえばハード面では、空港からの移動距離や交通料金などの問 │
│ 題があります。また、日本の美しい海岸線は、観光的価値が高いにもかかわらず、 │
│ 観光資源として十分活用されていません。ソフト面では、日本人の語学力の低さや、 │
│ 外国人に対する消極的な態度は、改善するべき点です。 │
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この内容で、特に気になったのは、後半の次の文章である。
「ソフト面では、日本人の語学力の低さや、外国人に対する消極的な態度は、改善するべき点である。」
また、向山浩子氏も著書「TOSS英会話指導はなぜ伝統英語教育から離れたか」の中で「外国語の習得は究極の異文化理解」と題して、日本人の外国人に対する消極的な態度について次のように述べている。
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│ケニア人の青年がホームステイしている。英語を含めて5つの言語が話せる。日本語を習│
│いつつある。習い始めのある日、自分一人で学校へ行くと初めて挑戦した。広くて複雑な│
│新宿駅構内で迷い、道を訊いたら、多くの日本人が逃げたそうだ。軽いショックを受けて│
│いた。カタコトの日本語で話そうとしても逃げたという。学校に40分も遅刻したそうで│
│ある。 │
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 このような態度では、観光立国など到底できない。当然、観光客など日本に迎え入れることなどできない。
 小学生の段階から、英会話に親しみ、コミュニケーション能力を養っておけば、外国人に対する消極的な態度は改善されるはずである。
そこで、観光立国と英会話をリンクさせれば、自分の地域を知ることもでき、英会話でのコミュニケーション能力も養うことができる。正に一石二鳥である。そのためにはどの様な授業を工夫すればよいかということを研究テーマにした。

3 仮説と主張
 次の4つの工夫をすれば良いと考えた。
@観光英会話を意識した指導計画を作成する。(全35時間)
 観光英会話に使えそうなダイアローグをピックアップし、指導計画を作成しておく。
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│ 時│       メ イ ン ダ イ ア ロ ー グ │
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│ 1│A:Nice to meet you. B:Nice to meet you too. │
│ │A:Good-bye. B:Good-bye. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 2│A:What's your name ? B:My name is 〜.(I'm 〜.) │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 3│A:Hello. How are you ? B:I'm 〜.(good.OK.happyなど) How are you ? │
│ │A:I'm 〜too.(または、good.OK.happyなど) │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 4│A:Thank you. B:You're welcome. │
│ │A:Excuse me ? B:Yes. │
│ │A:I'm sorry. B:It's 0.K. │
│ │A:Here you are. B:Thank you. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 5│A:What time is it ? B:It's 〜. または、I don't know. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 6│A:What's this ?  B:It's a 〜. (果物・食べ物・飲み物など) │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 7│A:What fruit is it ?  B:It's a banana. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 8│A:What animal is it ?  B:That's a Iion. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│ 9│A:What food is it ?  B:It's a hamburger. │
│ │A:How is it ? B:It's good. │
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│10│A:Is it a tomato ?  B:Yes, it is. または、No,it isn't.   │
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│11│A:Is it a dog or cat ? B:It's a dog. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│12│A:Are you a student ?  B:Yes, I am. または、No, I'm not. │
│ │A:What do you do ? B:I'm a student. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│13│A:What's wrong ?  B:I'm sad. │
│ │A:Take care. B:Thank you. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│14│A:What day is it ? B:It's Monday. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│15│A:What month is it ? B:It's January. │
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│16│A:What date is it ? B:It's the tenth of January. │
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│17│A:How's the weather today ?  B:It's fine. │
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│18│A:Do you have a pen ?  B:Yes I do. または、No I don't. │
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│19│A:How many pen do you have ? B:I have two. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│20│A:Do you play the piano? B:Yes I do. または、No I don't. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│21│A:Can you swim? B:Yes I can. または、No I can't. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│22│A:Do you like fish?  B:B:Yes I do. または、No I don't. │
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│23│A:Why do you like ? B:Because it's good. │
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│24│A:Which do you like ?  B:I like bananas. │
├─┼─────────────────────────────────────┤
│25│A:Where are you from ?  B:I'm from America. │
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│26│A:What's your favorite food ? B:I like gyouza. │
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│27│A:Where is the bathroom ?  B:It's overe there. │
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│28│A:How do you say Ringo in English ? B:Apple. │
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│29│A:Where are you going ? B:I'm going to school. │
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│30│A:What is Tochigi famous for ?  B:It's famous for Tousyogu. │
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│31│A:What do you want to eat? B:I want to eat 〜. │
│本時│ │
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│32│A:What do you want to drink? B:I want to drink 〜. │
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│33│A:What do you want to play? B:I want to play 〜. │
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│34│A:Where do you want to go? B:I want to go to 〜. │
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│35│観光をテーマにALTとフリートーク │
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A子どもたちが興味関心を惹くような食べ物・名所など、地域の特色をピックアップする。
栃木県には、宇都宮餃子、佐野ラーメン、栃木和牛など有名な食べ物が多い。子ども たちに栃木県で有名な食べ物や名所にはどんな物があるかを調べさせる。
食べ物編
とちおとめ・鮎・ゆば・しもつかれ・レモン牛乳・温泉まんじゅう・かんぴょう・たまり 漬け・ジャガイモ入り焼きそばなど
名所編
東照宮・ツインリンク茂木・華厳の滝・益子・足利学校・那須どうぶつ王国・那須高原・
 殺生石・なかがわ水遊園・大谷観音・足尾銅山・宇都宮タワー・竜頭の滝・いろは坂・戦 場ヶ原・霧降高原・男体山・中禅寺湖・龍王峡・茶臼岳・東武ワールドスクウェアーなど
B状況設定や変化のある繰り返しで指導する。
(ア)状況設定について
 向山浩子氏は著書「TOSS英会話指導はなぜ伝統英語教育から離れたか」の中で次のよう に述べている。
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│ 嬉しかったり、おかしかったり、びっくりしたり、怒ったり、そういう感情が伴うよう│
│ に状況設定を行なうと、より脳内に記憶が残るというのである。 │
│ 脳内記憶として定着をはかるのに「変化のある繰り返し」が相当必要というのはTOSS │
│ 型では定番である。 │
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感情が伴うように状況設定を行なうと、脳内に記憶が残る。ここがポイントである。
野網佐恵美氏は、TOSS英会話の授業づくり15号で、状況設定について次のように述べている。
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│ 例えばWhat's this ? の状況設定。新出単語を果物とする。人形が1枚の果物を指差し│
│て、What's this ? と尋ねる。先生はIt's a banana. と答える。この状況設定は、「適切」│
│か否か。これを「不適切」と答える方は多い。穴あきカードでバナナを隠す、バナナのシ│
│ルエットなど、尋ねているものが何かわからない状況がいいと言う。 │
│ (中略)一般的には「これは何か」が「わかりにくい」状況が好ましい。(中略) │
│状況設定は、大げさと思えるくらいが楽しい。ノリノリで楽しく、一度見たら忘れられ │
│ない衝撃的な状況設定で楽しく英会話を学ばせたい。 │
└───────────────────────────────────────┘
一度見たら忘れられない衝撃的な状況設定という表現は、まさに、向山浩子氏が言われて
いる、脳内に記憶が残るという表現と合致する。
できるだけ楽しく、子ども達にとって分かりやすい場面を想定し、感情が伴うような状況
設定を考える。
(イ)変化のある繰り返しについて
向山浩子氏は著書「TOSS英会話指導はなぜ伝統英語教育から離れたか」の中で「繰り返し反復練習の脳内実体」と題して、次のように述べている。

┌───────────────────────────────────────┐
│ 繰り返し、ダイアローグ(対話例)指導がされたとする。するとどうなるか。一度使わ│
│ れた神経回路が再び二度・三度と繰り返し使われると、その神経の繋がり具合が太くな│
│ っていく。(中略)同じ神経が使われると神経繊維にミリエン鞘という物質が張り付い│
│ て繊維が太くなるのである。そうすると中を通る情報が伝達されるスピードが速くなり│
│ 神経と神経のつながり(シナプス)が強化されるのである。繰り返しが及ぼす脳神経の│
│ 働きをシナプス部分に見いだしたヘッブという人の名を取って、この現象は「ヘッブの│
│ シナプス強化」と命名されている。(中略)繰り返しが子どもを退屈させないように工│
│ 夫する、変化をつける、楽しく練習させる、これこそが教師が教職の専門性を発揮して│
│ 授業化することである。 │
└───────────────────────────────────────┘
脳科学者の池谷裕二氏も著書「最新脳科学が教える高校生の勉強法」の中で繰り返し練習
の大切さについて、次のように述べている。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 海馬に必要だと認めてもらうには、できるだけ情熱を込めて、ひたすら誠実に何度も何│
│ 度も繰り返し繰り返し、情報を送り続けるしかないのです。そうすると海馬は、「そんな│
│にしつこくやって来るのだから必要な情報に違いない」と勘違いして、ついに大脳皮質に│
│それを送り込むのです。 │
│ 古来、「学習とは何か」に対して、「学習とは繰り返しである」と言われてきたのは、脳│
│科学の立場からも全くその通りだといえます。 │
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繰り返し練習することの大切さは、以上のことからも明らかである。
 しかし、授業をやってみて問題になってくるのは、子どもたちに「飽きる」雰囲気が感じられる時である。それは、子どもの声が小さくなってきたり、表情が暗くなりテンションが下がった状態になることである。
向山浩子氏が言うように、子どもを退屈させないように工夫する、変化をつける、楽しく練習させるという、教師の専門性を発揮していないことが原因だと感じる。
今回の授業をするにあたり、変化のある繰り返しについて次のことに注意して授業したい。
・心地よいテンポとリズムにのった練習
・練習回数は多すぎず、少なすぎず
・適度な緊張感をもたせる場面を意図的に作る(一人ずつ練習)
Cワークシートを工夫する。
今回は栃木県に、オバマ大統領が訪れたという設定で授業を行う。ワークシートには栃木県以外の県や地域、市町村を入れても十分授業を行うことができる。(Aの部分)
 また、何が食べたいかという設定でも、その地域の名産品を提示することで授業を行うことが可能になる。(Bの部分)子どもたちには、栃木県ばかりでなく日本の各地域の名産品を調査させることで、その地域の良さを発見できたり、会話を楽しんだりすることができる。
























4 本時の授業
既習事項のダイアローグ
・Hello. ・Welcome to 〜.・How is it ?. ・It's good.
本時で扱う主なダイアローグ
・What do you want to eat? I want to eat 〜.
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│ 活 動 の 流 れ T:教師 C:子ども全体 S:子 │ 留   意   点   │
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│1 状況設定 │・アメリカの大統領がオバマ│
│ T:Hello OBAMA. Welcome to Tochigi. │氏に決まったことを子どもた│
│ C:I'm hungry. │ちはよく知っている。 │
│ T:What do you want to eat? │そのオバマ氏が栃木に来て何│
│ C:I want to eat Gyouza . │を食べたいかを聞く状況設定。│
│ T:Here you are. │ │
│ C:Thank you. │ │
│ T:How is it ? │ │
│ C:It's good. │ │
│ │ │
│2 単語練習 │・栃木県で有名な食べ物を出│
│ 餃子・鮎・佐野ラーメン・栃木和牛・温泉まんじゅう │し、興味を惹きつける │
│ T:Gyouza │・基本は2→1→0でリピー│
│ C:Gyouza  以下、温泉まんじゅうまで │トだが、状況を見て変える。│
│ │ │
│3 口頭練習 │ │
│ (1)答え方の練習 │ │
│ @教師に続いて1回ずつ繰り返す。 │ │
│ T:I want to eat Gyouza . │ │
│ C:I want to eat Gyouza . │ │
│   以下、温泉まんじゅうまで │ │
│ A教師が尋ね、子どもが答える。 │ │
│ T:What do you want to eat? │ │
│ C:I want to eat Gyouza. │・ほめ言葉を使ってテンポ良│
│ 以下、温泉まんじゅうまで │く進める。 │
│ │ │
│ (2)尋ね方の練習 │ │
│ @教師に続いて2回練習する。 │・スクリーンを見ながら練習│
│ T:What do you want to eat? │をする。 │
│ C:What do you want to eat? │ │
│ T:What do you want to eat? │ │
│ C:What do you want to eat? │ │
│ A子どもが尋ね、教師が答える。 │ │
│ B子どもを半分に分けて、練習する。 │ │
│ C一人ずつ練習 │ │
│ │ │
│4 アクティビティ │ │
│ T:Hello OBAMA. Welcome to Tochigi. │・教師と子どもで役割を決め│
│ S:I'm hungry. │お手本を見せる。 │
│ T:What do you want to eat? │ │
│ S:I want to eat 〜. │ │
│ T:Here you are. │ │
│ S:Thank you. │ │
│ T:How is it ? │ │
│ C:It's good. │ │
│ │ │
│ T:Make pairs. │・ワークシートで会話を楽し│
│ Are you OK? │む。 │
│ Ready go! │ │
│  │ │
│5 Finish │ │
│ T:That's all for today. Thanks. See you. │ │
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《主な参考実践・文献》
・子どもが話せるTOSS型英会話指導 向山浩子(東京教育技術研究所)
・TOSS英会話指導はなぜ伝統的英語教育から離れたか 向山浩子(東京教育技術研究所)
 ・TOSS型英会話指導の基本 向山浩子 (東京教育技術研究所)
・TOSS英会話セミナー指導案・レジュメ集(1)井戸砂織 編
 ・TOSS英会話セミナー指導案・レジュメ集(2)野網佐恵美 編          
 ・TOSS英会話の授業づくり13〜19号  (明治図書)             
・珠玉のダイアローグ66・77アクティビティ集 渡邉憲昭・野網佐恵美(東京教育技術
  研究所)
・TOSS英会話指導案集〈5年・6年・Tea Break〉渡邉憲昭 編著 (東京教育技術研究
  所)
・小学校学習指導要領解説 外国語活動編 (文部科学省)
・最新脳科学が教える高校生の勉強法 池谷裕二著 (東進ブックス)
・小学校新学習指導要領の展開 外国語活動編 兼重 昇・直山木綿子編著 (明治図書) ・首相官邸キッズルームウェッブ・マガジン「観光立国とは?」
・英語は逆から学べ 苫米地英人 (フォレスト出版)