英会話C表指導案 2

┌───────────────────────────────────────┐
│状況設定の工夫や変化のある繰り返しで │
│スキル学習・ダイアローグ学習への批判的見解を払拭する英会話授業の工夫 │
│ │
│ Where do you want to go ? I want to go to 〜. │
│ │
│ TOSS北那須教育サークル あべ松龍矢abetatu@khaki.plala.or.jp(C表 13級 66点)│
│ 栃木県那須塩原市埼玉2-97 │
│ 総合的な学習の時間(英会話) 対象学年4年生 30時間前後 │
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1 テーマについて
スキル学習・ダイアローグ学習に対する批判的な見解を払拭するためには、どの様な授業を工夫すればよいか。

2 テーマ設定の理由
小学校学習指導要領解説「外国語活動編」の第2章、外国語活動の目標及び内容の第1節、外国語活動目標について次のように書かれている。
┌───────────────────────────────────────┐
│外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深め,積極的にコミュニケーション│
│を図ろうとする態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,│
│コミュニケーション能力の素地を養う。 │
└───────────────────────────────────────┘
また、目標は、次の三つの柱から成り立っているとして、以下を示している。
┌───────────────────────────────────────┐
│@ 外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解を深める。 │
│A 外国語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成 │
│  を図る。 │
│B 外国語を通じて,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませる。 │
└───────────────────────────────────────┘
 読み進めていくと、以下の文が出てくる。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 異なる言語や文化を理解したり,他者と積極的にコミュニケーションを図ったりするこ│
│とは,これからの社会に生きる子どもたちにとっては,重要なことである。その際,特に,│
│パターン・プラクティス(表現習得のために繰り返し行う口頭練習)やダイアローグ(対│
│話)の暗唱など,Bの音声や基本的な表現の習得に偏重して指導したり,「聞くことがで│
│きること」や「話すことができること」などのスキル向上のみを目標とした指導が行われ│
│たりすることは,本来の外国語活動の目標とは合致しない。 │
└───────────────────────────────────────┘
上記の文章が気になった。それは、普段、英会話の授業を行っている際、パターン・プラクティスやダイアローグの暗唱、音声の基本的な表現の習得指導、スキル向上を目標にした指導をしているからである。なんとなく、TOSS英会話の授業にたいする批判的な記述のように感じた。
向山洋一氏も産経新聞(2008.12.3)の記事で以下のように述べておられる。
┌───────────────────────────────────────┐
│ ところが文科省の担当者は、このような英会話の授業をいけないのだという。 │
│ (このようなとは、TOSS英会話指導のこと) │
│ 「スキル学習は外国語活動ではありません」「ダイアローグの学習は外国語活動に入り│
│ ません」という。 │
│ これは、自動車学校で「坂道発進などのスキルを練習してはいけません」、水泳の授業│
│ で「クロールの練習をしてはいけません」というようなものだ。 │
│ 学習指導要領では「外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ることができる │
│ ようにする」とある。そのため「外国語を用いてのコミュニケーションの楽しさを体 │
│ 験させる」「積極的に外国語を聞いたり話したりすること」などと示されている。 │
│ 私たちは、この課題を実現しようとしてきた。それが駄目だという。「外国語を聞い│
│ たり話したりする」のに、「スキルの学習」や「ダイアローグの学習」をぬきに、どの│
│ ようにしろというのだろう。 │
│ 指導要領には「場面」の例も示されている。「自己紹介」「食事」「道案内」「買い物│
│ 「あいさつ」「子供の遊び」「行事」などである。これらを「聞く」「話す」ことができ│
│ るには、その場面特有の会話「ダイアローグ」を練習させる必要がある。 │
│ 「話す」ことができるには、「くり返しの練習」(スキル)が必要だ。絵、イラスト、│
│ 写真を示しながらやると、子供たちは熱中して授業に参加をする。 │
│ 楽しい授業が、全国で指導主事の先生などからつぶされている。この10年間努力し│
│ てきたことは何だったのかと思っている教師は多い。 │
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2011年から5,6年生で外国語活動が必修化される。年間35時間。5、6年を担任する先生の中には、どの様な授業をしていけばよいのか自信がなく、不安を抱えていらっしゃる方もいる。TOSSが今まで行ってきた英会話授業の実践が現場には役に立つはずである。そのためには、スキル学習・ダイアローグ学習に対する批判的な見解を払拭する必要がある。そこで、どの様な授業を工夫すればよいかということを研究テーマにした。

3 仮説と主張
 「状況設定」を工夫したり、変化のある繰り返しを授業の中に取り入れたりすることで、スキル学習・ダイアローグ学習に対する批判的な見解を払拭する授業ができるのではないかと考えた。
@状況設定の工夫ついて
 向山浩子氏は著書「TOSS英会話指導はなぜ伝統英語教育から離れたか」の中で次のように述べている。
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│ 嬉しかったり、おかしかったり、びっくりしたり、怒ったり、そういう感情が伴うよう│
│ に状況設定を行なうと、より脳内に記憶が残るというのである。 │
│ 脳内記憶として定着をはかるのに「変化のある繰り返し」が相当必要というのは、 TOSS │
│ 型では定番である。 │
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感情が伴うように状況設定を行なうと、脳内に記憶が残る。ここがポイントである。
野網佐恵美氏は、TOSS英会話の授業づくり15号で、状況設定について次のように述べている。
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│ 例えばWhat's this ? の状況設定。新出単語を果物とする。人形が1枚の果物を指差して、│
│What's this ? と尋ねる。先生はIt's a banana. と答える。この状況設定は、「適切」か否か。│
│これを「不適切」と答える方は多い。穴あきカードでバナナを隠す、バナナのシルエット│
│など、尋ねているものが何かわからない状況がいいと言う。 │
│ (中略)一般的には「これは何か」が「わかりにくい」状況が好ましい。(中略) │
│状況設定は、大げさと思えるくらいが楽しい。ノリノリで楽しく、一度見たら忘れられ │
│ない衝撃的な状況設定で楽しく英会話を学ばせたい。 │
└───────────────────────────────────────┘
一度見たら忘れられない衝撃的な状況設定という表現は、まさに、向山浩子氏が言われている、脳内に記憶が残るという表現と合致する。
できるだけ楽しく、子ども達にとって分かりやすい場面を想定し、感情が伴うような状況設定を考えてみたい。
栃木県は、日光や益子、那須など観光地が多い。観光立国推進基本法ができ、TOSSでは観光教育が進められている。これは、子どもたちに自分が住む地域の良さを観光的な視点で見ていくことを教えるものである。4年生は、ちょうど社会科の授業で栃木県についての学習をする。そういった点からも、子どもたちにとっては、分かりやすい状況設定であると考えた。観光立国という視点も含めつつ、授業を考えていきたい。
A変化のある繰り返しについて
向山浩子氏は著書「TOSS英会話指導はなぜ伝統英語教育から離れたか」の中で「繰り返し反復練習の脳内実体」と題して、次のように述べている。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 繰り返し、ダイアローグ(対話例)指導がされたとする。するとどうなるか。一度使わ│
│ れた神経回路が再び二度・三度と繰り返し使われると、その神経の繋がり具合が太くな│
│ っていく。(中略)同じ神経が使われると神経繊維にミリエン鞘という物質が張り付い│
│ て繊維が太くなるのである。そうすると中を通る情報が伝達されるスピードが速くなり│
│ 神経と神経のつながり(シナプス)が強化されるのである。繰り返しが及ぼす脳神経の│
│ 働きをシナプス部分に見いだしたヘッブという人の名を取って、この現象は「ヘッブの│
│ シナプス強化」と命名されている。(中略)繰り返しが子どもを退屈させないように工│
│ 夫する、変化をつける、楽しく練習させる、これこそが教師が教職の専門性を発揮して│
│ 授業化することである。 │
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脳科学者の池谷裕二氏も著書「最新脳科学が教える高校生の勉強法」の中で繰り返し練習
の大切さについて、次のように述べている。
┌───────────────────────────────────────┐
│ 海馬に必要だと認めてもらうには、できるだけ情熱を込めて、ひたすら誠実に何度も何│
│ 度も繰り返し繰り返し、情報を送り続けるしかないのです。そうすると海馬は、「そん│
│なにしつこくやって来るのだから必要な情報に違いない」と勘違いして、ついに大脳皮質│
│にそれを送り込むのです。 │
│ 古来、「学習とは何か」に対して、「学習とは繰り返しである」と言われてきたのは、│
│脳科学の立場からも全くその通りだといえます。 │
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繰り返し練習することの大切さは、以上のことからも明らかである。
 しかし、授業をやってみて問題になってくるのは、子どもたちに「飽きる」雰囲気が感じられる時である。それは、子どもの声が小さくなってきたり、表情が暗くなりテンションが下がった状態になることである。
向山浩子氏が言うように、子どもを退屈させないように工夫する、変化をつける、楽しく練習させるという、教師の専門性を発揮していないことが原因だと感じる。
今回の授業をするにあたり、変化のある繰り返しについて次のことに注意して授業したい。
・心地よいテンポとリズムにのった練習
・練習回数は多すぎず、少なすぎず
・適度な緊張感をもたせる場面を意図的に作る(一人ずつ練習)

4 単元指導計画
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│次│     指導ダイアローグ │  指導事項 │
├─┼────────────────────┼────────────────┤
│1│ A:What do you want to eat? │食べ物(餃子・佐野ラーメン・鮎・栃│
│ │ B:I want to eat 〜. │木和牛・温泉まんじゅうなど) │
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│2│ A:What do you want to drink? │飲み物(ミルク・コーヒー・お茶・オ│
│ │ B:I want to drink 〜. │レンジジュース・ココアなど) │
├─┼────────────────────┼────────────────┤
│3│ A:What do you want to play? │スポーツ(サッカー・野球・バスケッ│
│ │ B:I want to play 〜. │トボール・バレーボールなど) │
├─┼────────────────────┼────────────────┤
│4│ A:What do you want to be? │職業(医者・パイロット・アスリート│
│ │ B:I want to be 〜. │・先生・コメディアンなど) │
├─┼────────────────────┼────────────────┤
│5│ A:Where do you want to go? │場所(東照宮・華厳の滝・足利学校・│
│本│ B:I want to go to 〜. │ツインリンク茂木・益子など) │
│時│ │ │
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5 本時の授業
既習事項のダイアローグ
・Hello. ・Welcome to 〜.・Let's go. ・Good idea.
本時で扱う主なダイアローグ
・Where do you want to go?  I want to go to 〜.

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│ 活 動 の 流 れ T:教師 C:子ども全体 S:子 │ 留   意   点   │
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│1 単語練習 │・栃木県で有名な場所を出し、│
│ 東照宮・益子・足利学校・華厳の滝・ツインリンク茂木│興味を惹きつける │
│ T:Tousyougu │・基本は2→1→0でリピー│
│ C:Tousyougu  以下、ツインリンク茂木まで │トだが、状況を見て変える。│
│ │ │
│2 状況設定 │ │
│ T:Hello TABUSE. Welcome to Tochigi. │ │
│ C:I want to go to somewhere. │・リンク栃木ブレックスに田│
│ T:TABUSE. Where do you want to go? │臥勇太選手が入団したことを│
│ C:I want to go to Tousyougu. │子ども達は知っている。その│
│ T:OK! Let's go! │田臥が栃木に来てどこへ行っ│
│ C:Good idea. │てみたいかを聞く状況設定。│
│ │ │
│3 口頭練習 │ │
│ (1)答え方の練習 │ │
│ @教師に続いて1回ずつ繰り返す。 │ │
│ T:I want to go to Tousyougu. │・ほめ言葉を使ってテンポ良│
│ C:I want to go to Tousyougu. │く進める。 │
│   以下、ツインリンク茂木まで │ │
│ A教師が尋ね、子どもが答える。 │・スクリーンを見ながら練習│
│ T:Where do you want to go? │をする。 │
│ C:I want to go to Tousyougu. │ │
│ 以下、ツインリンク茂木まで │ │
│ │ │
│ (2)尋ね方の練習 │ │
│ @教師に続いて2回練習する。 │ │
│ T:want to go? │ │
│ C:want to go? │ │
│ T:Where do you want to go? │ │
│ C:Where do you want to go? │ │
│ A子どもが尋ね、教師が答える。 │ │
│ B子どもを半分に分けて、練習する。 │ │
│ C一人ずつ練習 │ │
│ │ │
│4 アクティビティ │ │
│ │ │
│ T:Welcome to Tochigi. │ │
│ S:I want to go to somewhere. │・教師と子どもで役割を決め│
│ T:Where do you want to go? │お手本を見せる。 │
│ S:I want to go to 〜. │ │
│ T:OK!Let's go! │ │
│ S:Good idea. │ │
│ │ │
│ T:Make pairs. │ │
│ Are you OK? │・ワークシートで会話を楽し│
│ Ready go! │む。 │
│  │ │
│5 Finish │ │
│ T:That's all for today. Thanks. See you. │ │
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《主な参考実践・文献》
・子どもが話せるTOSS型英会話指導 向山浩子(東京教育技術研究所)
・TOSS英会話指導はなぜ伝統的英語教育から離れたか 向山浩子(東京教育技術研究所)
 ・TOSS型英会話指導の基本 向山浩子 (東京教育技術研究所)
・TOSS英会話セミナー指導案・レジュメ集(1)井戸砂織 編
 ・TOSS英会話セミナー指導案・レジュメ集(2)野網佐恵美 編          
 ・TOSS英会話の授業づくり13〜19号  (明治図書)             
・珠玉のダイアローグ66・77アクティビティ集 渡邉憲昭・野網佐恵美(東京教育技術
  研究所)
・TOSS英会話指導案集〈5年・6年・Tea Break〉渡邉憲昭 編著 (東京教育技術研究
  所)
・小学校学習指導要領解説 外国語活動編 (文部科学省)
・最新脳科学が教える高校生の勉強法 池谷裕二著 (東進ブックス)
・小学校新学習指導要領の展開 外国語活動編 兼重 昇・直山木綿子編著 (明治図書)