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フォスター・プラン(2004-11-28)

3年ほど前から、フォスター・プランという団体の翻訳ボランティアをしています。
フォスター・プランが運営する、途上国の地域開発プロジェクトの一つに、里親制度がありますが、日本にいる里親であるフォスター・ペアレントは、自分が毎月お金を出して支援している途上国のフォスタ−・チャイルドと、手紙のやり取りをします。このやりとりは英語なので、私のような翻訳ボランティアが、手紙を英訳・和訳するというわけです。

フォスター・チャイルドの手紙には、主に自分の生活や家族の様子が書かれています。とても貧しく、生きることで精一杯の彼らですが、不思議とどの手紙にも悲壮感はありません。みんなとても信心深く、いつも感謝の気持ちを持ちながら、明るく元気に暮らしているのです。物があふれて物質的には豊かな私たちのほうが、よっぽど精神を病んでいるように思えてなりません。

日本のフォスター・ペアレントの多くは、子供が手を離れた中年の女性。その次に多いのが、働いている若い女性。あとは、家族で登録していたり、中年の独身男性もたまにいます。唯一今まで見たことがないのは、若い独身男性です。手紙を書くのはおっくうかもしれないけど、手紙を通じてしか伝わらないこともある。フォスターチャイルドの中には字が書けない子も多く、そういう子は絵を描いていますが、それはときに言葉よりも多くのことを語っています。そして、彼らはみんな、ペアレントからの手紙をとても楽しみにしているのです。

先日、私も友達から久しぶりに直筆の手紙をもらいました。内容もさることながら、時間を割いて、長い手紙を書いてくれた彼女の心遣いを、とてもうれしく思いました。メールや携帯などの、お手軽なコミュニケーション手段が発達している今だからこそ、手紙が伝える力を感じています。
英訳チェック(2004-11-21)

「この英語、合っているかチェックしてもらえますか?」と、英訳のチェックをたのまれることがよくあります。

そこで、私も自然な英語になるよう、必死になって校正するわけですが、語順を入れ替えたりしていると、直しで紙が真っ黒になっちゃったりすることも。そうすると、きっと一生懸命考えた訳だろうに、ネイティブでもない私がえらそうに申し訳ないなぁと思ってしまいます。

かくいう私も、先日、やったことのない分野の文章を翻訳したときに、専門家にチェックをしてもらったら、それこそ真っ赤に直されて返って来ました。まがりなりにも、プロの翻訳者なので、それを見た瞬間は、「ひえーっ」とちょっとショッキングでした。でも、直された箇所を見ると、「なるほど、なるほど」と納得することばかり。専門的な表現や、自分のクセもわかったりして、ものすごく勉強になりました。それほど長い文章ではなかったものの、「目からウロコ」とはまさにこのこと。

日英翻訳を直してもらえる機会なんて、そうそうありません。私も、こういう経験は大切にしたいなぁと、つくづく思いました。
展示会の通訳(2003-10-26)

ビックサイト(国際展示場)で「オーガニックフェア」が開催されそこで通訳のお仕事をしました。今回は翻訳の話ではありませんが、あしからず。
私と友人M、普段は帽子を作っているJちゃんが交代で担当したのは、EOASというスリランカのスパイス企業のブースです。社長とジェネラルマネージャが来日し、彼らと訪れるお客さんの間の通訳をしました。
オーガニックスパイスはまだ日本にはそれほど入ってきていないため、ブースにはさまざまな人たちが訪れました。
某大手スパイス企業、オーガニック製品企業、料理研究家、オーガニックレストランのオーナー、有機農業をしている人。エッセンシャルオイルも扱っているので、エステシャンやアロマテラピースクールの先生などもやってきました。どの業界でも、その道のプロというのはとてもかっこいいです。
あるスパイス会社の担当者は、ブースにおいてあるブラックペッパーなどを手馴れた感じで実際に食べ、「やっぱり(オーガニックではないものとは)味がぜんぜん違う。香りが濃くておいしい」としきりに感心していました。
また、アロマテラピーの先生は、レモングラスなどの学名や成分などについて詳しく知りたがり、この通訳は結構苦労しました。また、紅茶会社の担当者は、マイルドな香りのアールグレイティーにとても関心を持った様子でした。
EOASは、スリランカで5代続いている、歴史のある企業です。土作りに時間がかかる有機農法において、これは安心できる製品だという信頼にもつながります。日本のJAS規格もとっている堅実な企業だし、ぜひ、日本でのビジネスがうまくいくといいなぁと思いました。

最後に、打ち上げディナーで聞いたスリランカの興味深い話を一つ。
スリランカでは、家を継ぐのは長男ではなく、末っ子だそうです。長子よりも末っ子を育てるときのほうが親が年をとっているため、いろいろと苦労をかける分、末っ子が家を継いで親の老後の面倒を見るということ。なるほどー。これも一理ありですよね。もう一つ、私とMの度肝を抜いた話がありますが(っていうかスリランカに生まれなくてよかったと思った)、まぁこれは、いつかみなさんとのお酒の席ででも。うふふん。
私自身、ドイツにいたことも影響しているのか、オーガニック関係には興味があるので、今回は趣味と実益を兼ねたとても楽しいお仕事でした。
そして、これがまた何かにつながるといいなぁと思った2日間でした。
番組素材翻訳(2003-10-10)

先日、初めて映像翻訳のお仕事をしました。テレビ局が海外で撮影した、インタビュー映像の翻訳です。テレビ局の人たちはこの翻訳をもとに、番組で使う部分をピックアップします。
こういうインタビューの聞き取りは、帰国子女の本領発揮といきたいところですが、南部なまりや古めかしいことば、専門用語などは、いろいろな勘を働かせなくては聞き取れません。自分でそのことばを言ってみたり、音感から何度も辞書を引きなおしてみますが、こういうときには、言葉を途中まで入力すると、それ以降を察知して表示する電子辞書がとても便利。しかし、この翻訳で最も時間がかかるのが、「時間とり」。素材映像の画面にはタイムコードが表示されており、それがずっと流れています。
そこで、翻訳した一文ずつ、きっかけのタイムコードを記録するのですが、話始めのタイミングをうまく一時停止しないと、何度も巻き戻さなければなりません。おまけに私の映像翻訳のインフラはまだ整っておらず、へなちょこテレビデオなので、細かいフレームあわせも大変。なんかこんなことやっていると、ジョグダイアルをくるくる回しながら番組制作をしていた、大学時代のサークル活動を思い出してしまいます。いつも味気ない淡々としたビジネス文書を訳していますが、こういう「やわらかい」翻訳もたまには楽しいです。
実際の番組でどこが使われるかを見るのも楽しみ。で、次はぜひ衛星チューナーつきのテレビと、DVD+VHS再録ができるデッキを買おうと計画中です。
三文字役職(2003-10-05)

IT業界は、何でも三文字に略したがります。ERP、SCM、CRMなどなど、数え上げればキリがない。
そして、これが役職についても言えます。IT業界に限ったことではありませんが、アメリカの企業の幹部たちの役職は、"C"から始まる三文字で表すことが多いです。例を挙げると CEO:    Chief Executive Officer    最高経営責任者 (社長は大抵これ)
COO:   Chief Operating Officer     最高執行責任者
CFO:    Chief Financial Officer      最高財務責任者
CIO:     Chief Information Officer  最高情報責任者/ Chief Investment Officer 運用最高責任者
CTO:   Chief Technical Officer     最高技術責任者
CMO:   Chief Marketing Officer     マーケティング最高責任者
CSO:  Chief Strategic Officer    最高戦略責任者 
もっとあると思いますが、よく見かけるのはこんなところです。これらの経営幹部を総称して"C-level"と呼んだり、"CXO"と言うこともあります。
なんだか日本語にするとピンと来ないなぁ…と常々思っていたのですが、最近では日本の企業でも、これらの三文字『C役職』を採用しているところもあるようです。
その最たる例が、おもちゃメーカーのバンダイ。ガンダム事業部の責任者の肩書きが、"CGO - Chief Gundam Officer" となったことがニュースになりました。
こういう余裕のある遊び心が好きです。ちなみにこのおじさんは、とても誇らしげに名刺を記者に見せていました。
そういえば私も昔「シャア」が好きだったなぁ…。
途中まで(2003-10-01)

クライアントから「途中までできた分を送ってもらえますか?」と言われることがあります。
これを言われるといつも「イヤだなぁ」と思います。私は、長い文章の翻訳の場合はたいてい一度全部をざっと訳してから、それに推敲を重ねていきます。
つまり、
(1)英語から日本語へ、またはその逆に最初から最後まで機械的に訳す。この時点ではベタ訳状態。
(2)訳抜けがないかどうかをチェックし、用語や表記の裏取りをする
(3)できればちょっと間を空けてから、訳文をこなれた文章にし、最終チェックをして納品する
という手順をとります。
人によってやり方はさまざまだと思いますが、これが私にとっては一番テンポがよく、ミスも少ない手順です。もちろん、これはあくまで時間的な余裕がある場合の方法ですが。
最初の話に戻りますが、「途中までできた分」と言われると、大抵は@の時点の文書をクライアントに送ることになります。これは例えて言うなら、油絵のデッサンの段階を人に見せなければならないような、まともに練習してないのに、ピアノの発表会に出なければいけないような、さらに平たく言えば、すっぴんで下着姿なのに人前に出なきゃいけないような恥ずかしさです。(これはちょっといいすぎか)
もちろん、クライアントには「これはまだ完成品ではありません」ということを念押ししますが、誤字脱字や幼稚な表現がいっぱいの未完成品を見せるのは、苦痛です。
さらに、例えばパワーポイントなどのプレゼン資料の場合は、訳語の統一などの問題なども発生します。後の方で訳語が変われば、それを申し送りしなければならず、二度手間です。
クライアントは一刻も早く文書を欲しがっている。でも、時間はある程度かけないと翻訳の質が下がる。両者の妥協点を見つけることがエージェントの腕の見せ所でもあり、翻訳者はいつでも「時間との戦い」です。
プロであること(2003-09-20)

先日、BSの英語ニュース番組の製作現場を見学しました。そこで、改めて「プロ」ということについて考えさせられました。
この番組は5分間の短いものですが、プロデューサー、アシスタント、技術者、翻訳者がスタジオに集まり半日かけて番組を作ります。それぞれの道のプロが、短い時間に集中して自分の力を出し、1つのものを完成させる様子は、見ていてすごくかっこいいし、感動を覚えます。
私は、自分のことを翻訳の「職人」だと思っています。日々の鍛錬が活きてくるし、長くやればやるだけ、それが自分の身に付く、地味だけどとてもやりがいのある仕事です。なんていうと聞こえがいいけど、企業に属していないだけに、自分がやったことには自分で責任を持つ「プロ意識」の大切さも肝に銘じています。
細かく言えば、どうしてその言葉にしたのかをきちんと説明できたり、決められた約束事を守るということです。そして、限られた時間のなかで、質の高いものをクライアントに提供できるよう、いつもウンウンうなりながら、締め切りギリギリまで格闘しているわけです。
会社じゃないから昇進とかないけど、「あの人に任せておけば安心」といわれるような翻訳者を目指して、あせらずマイペースにやっていければと思っています。
仲間(2003-09-01)

今回は翻訳の話から少しはずれるかな。
昨年ワールドカップサッカーが行われた横浜国際競技場では、多くのボランティアスタッフが携わっていました。私と友人は、HPの英訳作業をしていたのですが、先日、ボランティアたちの一周年記念飲み会がありました。
ああいう場に行って思うことは、1つのイベントに一緒に関わった仲間たちというのは、一生の宝物だということです。準備して大きなイベントを成功させることを通じ、さまざまな深い思い出を共有しているからでしょうか。こういう仲間には何か、とても固い絆を感じます。
私はワールドカップにはあまり関わりませんでしが、(観戦はかなりハマりましたが)何年か前に、ある大きな国際会議のお仕事に準備の段階から関わることができ、それは今でも忘れられない経験になっています。お仕事自体がおもしろかったのはもちろんのこと、一緒に働いた仲間とは、いまでも交流が続いています。限られた期間ということもあり、当時は休みの日もみんなで旅行に行ったりして一緒に楽しみ、本番まであっという間の半年間でした。同じ班でゴールインしたカップルもいます。
こんな思い出に残るいい仕事が経験でき、一生の仲間に出会えた私は本当に幸せ者だと思います。
仕事ではネットワークは大切。翻訳のような孤独な作業ではなおさら、人とのつながりがさらにいい仕事につながっていきます。
そういう意味でも、信頼できる仲間は大切にしたいと常に思っています。
ファイルの取り扱い(2003-08-12)

先日、とても恐ろしい体験をしました。
日本語のファイルを上書しながら英語に翻訳していたのですが、ある時点で突然、
「原因不明のエラーが発生しました。ファイルを強制終了します」というメッセージが現れたのです。
半日かけた作業はすべてパァ。夜中の1時の出来事です。こういうときって一時的に頭がジーンとして、ショックは時間差でドカンとやってきます。でも、締め切りは迫っているし、ショックでボーっとしている時間はないので、何とかファイルを修復しようとしました。
ところが、その強制終了されたファイルは二度と開かなかったのです…。そこでまた最初からやり直したのですが、今度はちょっとずつ別ファイルに保存しながら作業していきました。ところが…中盤くらいで再び例の見たくないエラーメッセージが現れ、強制終了。でも、今回は別ファイルがあるから、そんなにロスはないやと思ったのも
つかの間、何と信じられないことに、今まで保存したすべてのファイルが破損して開かなくなっていたのです。
これで私の脳は完全にご臨終状態となり、とりあえず寝て起きたら直るかもしれないと思い(PCも疲れ果てたんだろう)その日はすべてを諦めて寝ました。
そして翌朝、別のPCで再度作業をしてみましたが、また同じ現象が起きたのです。さすがにこれはファイル自体がおかしいと思った私は、中身を点検してみました。すると、なんだか妙に重い画像が張り付いた図を発見。そこで、とりあえずそのアヤシげな図を削除してみたら、なんとその後はスイスイと問題なく最後まで作業することができたのです。
何がどう悪さしていたのかは、いまだに不明ですが、ファイル周りのトラブルは、翻訳者がたびたび直面することであり、こういうときは、やはりパソコンに詳しいほうが得だなと思います。休みの作業だと、エージェントに相談することもできません。
1つ今回の教訓になったのは、「重い画像には要注意」。今回のような強制終了はあまりないことですが、パワーポイントの資料などで重い画像が使われていると、妙に作業が遅くなったり、途中でフリーズしたりします。非常事態を考え、ファイルを分割するとか、バックアップをとるなどの予防策は必須です。「自動保存」機能もあまりアテにはできません。
それから、PCを買い換えるときには、メモリは増設したほうがいいと思います。そうすれば、パワーポイント100ページのプレゼン資料でも、いくつもアプリケーションを開きながら作業しても大丈夫。
それにしても、今回の件では、寿命が30年くらい縮まった気がします。
下訳(2003-07-15)

「下訳」という仕事をご存知でしょうか。
外国の本を日本で出版するかどうかを決めるときに編集者が参考にする、要訳を作成する仕事です。現在、私は児童書の下訳をちょこちょことやっています。そして、これがとても楽しくて勉強になります。
まず、英語の本を読むということ。児童書だからと言ってあなどれません。単語も難しいものもありますし、内容が深いものもあります。ここでは英語力が試されます。
そして、それを理解して、日本語にまとめるという作業。ここでは日本語力が必要とされます。忙しい編集者が、ぱっと読んでわかりやすいように、うまくまとめないといけません。これがなかなか難しい。実際のところ、内容の濃いものほど、短く(A4で1ページ程度)まとめるのが難しかったりします。欲張って、「あれも入れたいこれも入れたい」とやっていると、どんどんと分量が長くなり、だらだらとしたものになってしまうのです。
余談ですが、Starbucks で原書を読みながらとったメモを友人が見て、「何これ、汚くてぜんぜん読めない」って笑われました。うん、自分で自分の字が読めないときがある。ノートPCにバンバン打ち込んでいったほうが効率的かな。わはは。そして、一番やりがいがあるのは、後半のコメント部分です。
ここでは、その話について全体的に批評します。もちろん、冷静かつ客観的に書かなくてはならないのですが、気に入った話はどうしても褒め称えてしまいます。これは反省点。
それにしても、児童書は夢があり、読んでいてとてもいい気持ちになります。良質で五感に訴えてくるものは、ぜひ出版して多くの子供に読んでほしいと思います。ファミコンもおもしろいけど、やっぱり本のファンタジー性にはかなわない。
そして、いつの日か、自分でも一冊翻訳してみたいな…。と夢を馳せるのでありました。
(Special thanks to M (as always)−for offering me such a great job !)
冠詞(2003-07-10)

翻訳をしていると、「この単語にはtheをつけたほうがいいですか?」という冠詞の質問をよく受けます。日本語にはない文法上の規則だけに、迷うことが多いですよね。
文法の本を見ると、いろいろな解説が載っていますが、正直なところ「???」と思ってしまいます。じゃどうすりゃいいんだ。
私は迷ったときには、「読む人が知っていることに関しては、確認の意味でtheをつける」「読む人がまだ知らないことには、冠詞をつけない」「『とある』みたいな意味をつけたいときには"a"をつける」という方針をとっています。
あとは、「読んだときの語感」。なんかアバウトだけど、これが結構あなどれない。要は、読む人にとってわかりやすく、スムーズに読み進めることが大事なわけですから。
私は学生時代のほとんどをインターナショナルスクールで過ごしたので、こういう感覚的な対処ができるのかもしれません。専門家が見たら「おいおい」と思われるかもしれないですね。
まぁあくまで基本的なことを踏まえたうえでの、迷った場合の話です。
社内規定(2003-06-20)

社内規定文書の英訳ってむずかしい。まず、原文の日本語の言葉が意味不明の場合がある。で、訳語をあてはめる際にも、「それっぽい」文章にするには、どの単語を選べばいいのか悩みます。Webで似たような表現を探してみたりもしますが、試行錯誤してウンウンうなってしまうことが多い。
日英はむずかしいけど、とても勉強になります。特に、英語にするときはより具体的に表現しなければならないのが、英語と日本語の性質の違いだなぁといつも思います。それに、英訳の力をつけるには、やはり普段からいろいろな英文に接することが大切ですね…