しばらくするとリビングの方から森田を呼ぶ平井の声が聞こえてきた。
『はい』と答えて振り向くと、廊下の向こうから喪服姿の平井が現れた。
黒いスーツにネクタイという出で立ちは普段滅多に見られる物ではなく、 影のある平井の表情と相まって 胸の奥に疼いた熱い物に森田は一瞬息を呑む。
…この状況で 何考えてんだ 俺…
想いを隠して磨き終わった靴を並べ腰を上げると 平井の頬に笑みが上った。
「気が利くじゃねぇか。 ありがとよ」
自分が留守にしている間にしておいて欲しいことを細々と伝えた後 、平井はドアノブに手をかけた。
「いってらっしゃい。 気を付けて」
その声に振り返った平井は 少しだけ微笑んで そして出ていった。
<<続く>>
Date 2006 ・ 07 ・ 20