夢十夜                      07.11.18. 



   << 一の夜 >>





   森田が居ない。





   部屋の全ての扉を開けて 「森田 森田」と呼びかけても 答えがない。

   不安になり ベランダに出て下を覗き込んでも、
   クローゼットの中をかき回しても、
   玄関を開け廊下を見回しても、
   姿がない。




   どうすることも出来ず
   ただ ぽつねんとソファに腰を落とし 
   その笑顔を思い浮かべていたら
   自然に涙が零れてきた。



   どうしよう こんなにも奴が恋しいだなんて どうかしている…
   





   ざわつく思いに耳鳴りがして歯を食いしばった時、    ポン  と音を立ててTVがついた。


   「 …どうしたの?!   銀さん 大丈夫…? 」





   四角い画面の中で 黒い瞳が

   森田が心配そうにこちらを見つめていた。








   *********




  
うわぁん… 今朝方は失態をやらかし すまんかった!
  しょうもない理由でオールにつき合わせてしまったお二人に焼き土下座いたします。
  もう 二人とも大好きだから この埋め合わせはなんでもするから ゴメン!!!!

  っていうか こんな素敵な福本仲間に出会えて ほんと良かった… (よがり泣き… )




     夢十夜                      07.11.22. 



   << 二の夜 >>





   「 いいですか? 」 と問うと、
   「 …お前 そいつは大きすぎて入らないよ 」 と困った顔の銀さんが言う。



   「何を言ってるんです。 いつも入ってるじゃありませんか…」 と返して
   逃げようとする白い腰に手を回し引き寄せると
   彼は目を伏せて ふるふると首を横に振る。


   儚げな仕草に戸惑って  それでも気持ちは萎えなくて
   割り込ませた躰に力を入れれば 「ああ」と声を上げて彼が身を捩る。


   「 ほら 大丈夫じゃないですか。 … 変な事 言うんだから … 」
   笑いながら頬を寄せ 耳朶を喰むと  
   背けた顎の先に「 違う… 」と小さな彼の囁きが漏れる。



   今日のあなたは何だかおかしい。 掴み所のない違和感に苛立って
   柔らかな感触の中へと一気に身を沈めた そのとたん、

   ポン…   と音を立てて


   

   あなたの姿が  はじけて消えた。









   *********






   祝 サッカー日本代表 オリンピック出場決定!


   引き分けだったけどまずはめでたい!
   でも北京でオリンピックなんて危険すぎて止めてほしいです。
   勝ち負けよりも 選手達が無事に帰ってこられますように…


   頑張れよ!反町!!  
   そして  頑張れよ オシム!!



 夢十夜                      07.11.25. 



   << 三の夜 >>






   暖かな掌があやす様に背中をすべる。
   その心地よい穏やかなリズムに呼び覚まされ、 伸びを一つしてゆっくりと瞼を開いた。





   「あっ…!  目 覚ました… 」
   頭の上で森田の声がする。  どうやら奴の膝の上でうたた寝してしまったようだ。





   「  …森田…  」  名前を呼ぼうとして口を開くが 寝起きのせいか、上手く声が出ない。
   「 ??   …何? どうかしたの??」 少し首を傾げて 森田が顔を覗き込む。
   いや 別にいいんだ。 特に何が言いたいわけでもない。 
   ただこうしてお前の膝の上で とろとろと微睡んでいる時間が嬉しいんだと伝えたくて
   森田の身体に腕を伸ばした。 


   「ん?  抱っこ??」
   笑いながら森田が両手で俺の頬を包む。
   『…子供扱いするんじゃねぇよ… 』 少しムッとしながら その手を振り払おうとして
   森田の手の大きさに一瞬たじろぐ。
   目一杯に掌を広げても 奴の親指一本を掴むのがやっとのことで、 よくよく見れば
   俺を覗き込むその顔も 何故だか妙に大きく見える。
   「もー…  何気に力強いんだから〜… 」
   握られた手を揺らしながら それでも笑顔で森田が額を寄せる。




   … おかしい …
 



   不安になって奴のスエットを両手で掴む。
   「どーしたのぉー…」
   軽々と抱きかかえられ 頬っぺたに一つ優しいキス。
   それはいつもの情熱的なものではなくて…。



   『 … 違う。 俺が欲しいのは そんな綿あめみたいな甘ったるいモノじゃなくて…』



   訴えたくても言葉が出ない。 悲しくなってその広い胸に顔を押し付ける。
   「え? …え? …どうしたの?  …ごめんごめん!  …ちょ …ちょっと…! 」
   困惑した森田が俺の身体をぎゅっと抱きしめる。
   とりあえず その体温だけはいつもと変わりなく、少しだけ気持ちが軽くなる。











   「 なんだよ …。     赤ん坊一人も面倒見れねぇのか お前?… 」

   気配も見せずに声がした。
   聞き覚えのある 低い声。





   「 も〜… そんな呑気なこと言ってないで どうにかしてよ銀さん!! 」



   『 … 銀さん …? 』









   森田の肩の向こう  俺の視線の先に            










   静かに笑う俺がいた。 


   
  


   




   *********







  夢十夜                      07.12.05 



   << 四の夜 >>






   「困ったな…」
   謳うような声で 銀さんが呟く。
   「どうしたの?」と聞くと 「食べられないんだ…」と返された。





   「食べられない って…  具合悪いの?」
   「いや…」
   首を傾げる俺の前で  彼が箸でつまんだ魚の切り身が
   さらりさらりと 砂に変わった。


   「食べられないんだ…」
   歯痒そうに銀さんが繰り返す。


   スプーンにすくった液体が  手に取ったグラスの中身が
   見る見るうちに さらりととける。






   
   「空腹だ…  喉が渇いたよ…」
   俺の腕の中にくったりと身を傾けて 悲しそうに彼が言う。








   どうしよう…  どうしよう…    頭の中で声がはね返る
   考えて 考えて  震える腕を差し出した。
  

   「 … ねぇ  銀さん …?」
  


   鼻先に差し出されたスプーンを見て
   可愛らしい仕草で 銀さんは首を横に振る。
  

   「無理だ… 食べられない…」


   「大丈夫… 俺が食べさせてあげるから…」






   どうしても 口にして欲しくて
   小さい子供にするように 「あーん…」 と 言うと
   少し恥ずかしそうに 目を閉じて 「あーん」と銀さんも唇を開いた。

  
   祈るような気持ちで流し込んだ液体は 何にも化けずに口腔に落ち
   彼が喉を震わせて飲み込む様を 恍惚として眺めていた。





   「 … おいしい … 」
   猫のように目を細めて銀さんは微笑み、 もっと欲しいと喉を鳴らす。



   














   「困ったな…」
   満腹して 少し眠たげな彼が  腕の中で身を丸めて呟く。

             
 

   「 …お前がいなかったら   俺は生きていけないじゃないか … 」







   



   *********



 

  夢十夜                      07.12.16 



   << 五の夜 >>






   白いチャペルの中には光が溢れ
   ざわめきと笑い声に包まれていた。


   人垣に囲まれた今日の主役は満面の笑みをたたえ 
   身体全体からは幸せが零れ落ちんばかりに見えた。



   『 …何で俺はここにいるのだろう? 』



   人々の輪から離れた入口近くの木のベンチに腰をおろし
   視線だけでその姿を追いながら自問する。



   『 俺は知らされていない  俺は呼ばれていない 』 



   悔しくて寂しくてやりきれなくて立つことすら出来ない。
   自分の胸の中にあった想いが 此程までにちっぽけで嫌らしいものだったことに
   気がついて 吐きそうになる。





   『 …俺はお前を独占したいんだ… 』





   男だろうが女だろうが 金だろうが国だろうが
   お前の心をお前の身体を 独り占めにするもの全てに怒りが沸いて
   音を立てる程に奥歯を噛みしめた。










   逃げ出したかった。
   お前の幸せな姿が見たくないのではなく
   その隣に自分がいないことが どうしても理解できなかった。


   
   『 …何で俺はここにいるんだ… 』



   きっとこれが 俺への裁きなのだろう。
   俺がいままで重ねた悪行への罰。
   一番大切なものを目の前で取り上げられ 永劫の闇を目にする罰。
   お前は俺の手の届かないところへ行ってしまうのか…?




   『 嫌だ…!   此処にいてくれ。俺の隣でずっと笑っていてくれ。
   俺の名前を呼んでくれ。俺の身体を抱きしめて愛していると言ってくれ。
   お願いだから…    俺以外の誰かのものになんか   ならないでくれ…! 』






   言葉は自然に滑り落ちた。

   「 …森田  愛しているんだ… 」



















   「   … 銀さん … ?   」


   頭の上で声がした。
   振り仰ぐと 正装の森田が微笑んで手を差し伸べていた。








   「 … 早く来て下さい。  あなたがいないと式が始まらないじゃないですか… 」




 








   



    *********




     銀さんはね 森田が銀さんを想うよりもっとずっと森田のことが好きなんだと思うんです。
     好きすぎて 口にも出せない。 (違う意味では出してますが… ってオイ!)

     だけど 実はそんな風に素直じゃない自分に対して ちょっとイライラしてて
     屈折した気持ちから悪夢を見て夜中泣きながら目を覚ましたりして。

     安らかな寝息をたててる森田が隣にいることに安心して そっと手をつないで眠ったりしてたら
     すごく可愛いな と思ったりしますです。 (ぽわん…)