末っ子と長男

「花井、プレゼントちょーだい。」



ある朝、登校した花井を待っていたのは田島の突拍子も無いセリフだった。
朝練の支度をしようとする花井にも構わず、田島がじゃれついてくる。
家からユニフォームを着てきている田島とは対照に、着替えすらままならない花井は少々困り顔だ。



「なんだよ、プレゼントって。」

「えー、だって俺今日誕生日!」

「おお、そりゃめでたいな。」

「なーなー、プレゼントー。」

「んなのあるわけないだろ。大体今日がお前の誕生日だっていうのも今知ったんだぞ。用意してるわけないだろうが。」

「えー!欲しい欲しい欲しい!」



どこの駄々っ子だと思うくらいに聞き分けの無い西浦の4番。
だが、やはり『無敵』の称号は伊達じゃなかった。
花井は、小さくため息をつくと妥協案を申し出る。



「しょうがねえな。じゃあ帰りになんかおごってやるよ。それでいいか?」

「おう!やったね。だから花井好きだ!」



(全く、これだから末っ子ってヤツは…。)

一瞬で上機嫌になった田島を眺め、花井は苦笑を隠しきれなかった。
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初出

2006.03.12