唯一の
オレは何も望まない。
マウンドで投げられるなら、それ以外のことは何も望まない。
だって、ダメピーのオレが投げるのを許してくれるところなんて。
オレの投げた球を捕ってくれる人がいるなんて。
そんな奇跡のようなこと、あるわけがないんだ。
中学時代、オレは絶対にマウンドを譲らなかった。
ダメピーなの自分でわかってたのに、それでも、譲れなかった。
チームのみんなに、特にオレよりすごい投手なのに控えにしかなれなかった叶くんには、本当に悪いことをしたと思う。
そのまま高等部に行けば、きっとこのまま投手でいられた。
ヒイキだと言われても、オレの我が儘は通ったと思う。
でも、もう無理だった。
我が儘を通した中学3年間。
あと3年、同じように我が儘を通すことはオレには出来ない。
だから、オレは三星を出た。
そして、無名の公立校を選んだ。
ここでだったら、オレのようなダメピーでも投手でいられるかもしれないから。
お願いします。
オレから投げることを取り上げないでください。
他に何も望まないから。
だから、オレに投げさせてください。
投げていたいんです、神様。
初出
2005.05.22
三橋。西浦入学直前の頃。