豆撒き2

「何をやってるんです?」



エドワードが投げられようとしたまさにその時、凛とした声が響いた。
部屋に入ってきたのはリザ・ホークアイ中尉。
ここ東方司令部で影の実力者として密かに恐れられている女性だ。
リザの声が聞こえた途端、部屋の中が静かになる。
少佐など、今にも投げようという格好のまま固まっている。
普段直接かかわることのない少佐までが同じ反応をするのが面白い。
だが、エドワードにとってみれば面白がっている場合ではなかった。



「皆揃っていったい何をしているんですか。」



誰からも反応が返ってこないのでリザはもう一度繰り返す。
どこか疲れた風なのは呆れているからだろうか。

ハボックとブレダがお互いの脇腹をつついている。
フュリー曹長は既に頭を垂れている。
その腕に抱かれているブラックハヤテ号は、飼い主の登場に尻尾を振っている。
他の面々からも言葉は無い。
それはそうだろう。
今は思いっきり勤務時間内なのだ。
集団でサボって騒いでいたなどと、どうしてリザに言えよう。
そんなことを告白しようものなら即座に拳銃で狙い撃ちだ。

リザは誰からも答えが返らないと知ると小さなため息を一つ吐き、口を開いた。



「フュリー曹長、通信兵が探していました。無線の調子が良くないそうよ。早く行ってあげなさい。」

「ハボック少尉、巡回の報告書がまだ未提出です。今日中に提出してください。」

「マスタング大佐、あなたまで一緒になって…。先程お願いした書類は出来たのですか?期限まであと1時間ほどですが。」



流れるようなリザの言葉に、その場にいた全員が動き出す。



「アームストロング少佐、エドワード君を降ろしてあげてください。」

「うむ。」










そんな成り行きで豆代わりに投げられることを免れたエドワード。
リザには逆らわないようにしようと、思ったとか思わなかったとか。
Back / Top / Next →

初出

2005.02.05